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Scene 17 [いちごみるく]

[Another Side of Tennis]
坂東 海

Scene 17
[いちごみるく]

雨が降り出すか否やコートにカバーをかけるボールパーソン。
ウィンブルドンで良く見かける光景。
それでも、一年でもっともいい季節らしい。
1982年、ウィンブルドン開催中の6月25日、雨のウェンブリーでのLiveでミック・ジャガーは「Fuckin’cold!Shit!ロンドンは最悪の街だぜ!」と叫んだ。
この年のウィンブルドン男子決勝はコナーズvsマッケンロー。
ウィンブルドン男子決勝史上最長の試合をコナーズが制して、最後のウィンブルドン優勝を飾り、女子はナブラチロワが6連覇をスタートさせた年。
ウィンブルドンだけを見れば華やかだが、ロンドンは暗くて湿った印象がある。
あの時と比べて失業率は半分以下になったが、街はどうなっているんだろう?
とは言え、ウィンブルドンはウィンブルドン。
村上龍の次の言葉は、悔しいけど全てを言い表している。
「ここはすべてのテニス愛好家にとって、聖地である。芝の美しさはたとえようもない。疑いなく、テニスの権威と伝統はウィンブルドンで守られており、真のチャンピオンはここからしか生まれない。」

ウィンブルドンと言えば[ストロベリー&クリーム]。
芝生だけでなく、深緑に統一された施設に赤い苺と白いクリームが良く似合う。
でも場内では名物だけあって高いので、地元の人達はスーパーで買って持ち込んで食べているらしい。
ピムズと言うリキュールにキュウリ、ミント、バジルを入れたソーダ割も名物。
「イギリス人はキュウリのサンドイッチが好き」とは言うが、酒にキュウリ…。

さて、知ったかぶってここまで書いて来たが、ウィンブルドンの事なんか全く気にしなかった年がある。
1986年ウィンブルドン本選初日の6月23日から6月27日迄の5日間、俺は毎晩武道館に行き、29日は黒澤フィルムスタジオに行った。
それはあるバンドのFinal Liveで、Liveの後は浴びる様に酒を呑み、27日は新宿にぽっかり空いてた空き地、都有5号地(現都庁)で朝を迎えた。
Singerは終わりのないかの様な心地良い16ビートのカッティングに合わせて、
「LOVE MINUS ZERO 俺から愛をひけば LOVE MINUS ZERO二人から愛をとればゼロ」ラヴ・マイナス・ゼロ/Kai Band
と唄い、ステージから去って行った。

あのクールで熱い歌はウィンブルドンに合ってるかもしれないな。
今夜はあの曲をバックに流して、いちごみるくでも舐めながらTV観戦しよう。

1986年ウィンブルドン優勝者は、調べてみたらベッカーとナブラチロワだった。

2004.6.21
Tanashi
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KAI | 投稿者 坂東海 00:01 | コメント(0)| トラックバック(0)

Scene 16 [がんばれがんばれ]

[Another Side of Tennis]
坂東 海

Scene 16
[がんばれがんばれ]

看護士である家人が、ある時こんな事をポツリと言った。
「患者さんの家族が”頑張って”って声をかけるんだけど、充分頑張っているのがわかるから、見ていて辛くなるんだよね…」

“頑張って”
無邪気な子供には似合うけど、大人が何かに立ち向かっている時には気軽にかけれる言葉ではないと感じる。

杉山愛選手は“頑張って”が似合うプレイヤーだ。
彼女は無責任な“頑張って”に笑顔で手を振る。
勿論“頑張って”に悪意はないし、彼女は自分のファン、観客に対してプロとして心から感謝しているんだろう。

クリスターズとのペア解消以来、彼女には“ツキがない”と感じてしまう事が続いている。
ブエノスアイレスで行われたフェドカップでの事は観戦してもいないのに、テニス誌の記事を読んだだけで涙が滲んだ。
彼女はコートに入れば、激戦の女子テニス界で心情としてだけでなく、常に100%のテニスを強いられている。
もう少しで到達しそうな何かをいつも求めてはあがき、それを得ては又何かを求め、自分を高め続けると言う、凡人には想像出来ない崇高な世界だ。
我々には彼女を含め、プロ選手へのリスペクトが足りないのではないか?

もう少しでウィンブルドンが始まる。
杉山選手の心からの笑顔が見たい。
赤土をきれいに落として、真っ白いウェアで緑の芝生に立ってほしい。

彼女達がプレイヤーとして輝いている時は短い。
はかなさと表裏一体の輝き…。
それが少しでも長く続く事を願う。

名前の通り愛らしい彼女に、こんな曲があるのを教えてあげたい。
「いつでもここにいるから 帰って来ていいんだよ そう思えばあとひとつふたつ 出来る我慢もふえるでしょ がんばれがんばれ」がんばれ がんばれ/シオン

2004.6.12
Tetsugakudo
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SION | 投稿者 坂東海 00:01 | コメント(0)| トラックバック(0)

Scene 15 [NO SECURITY]

[Another Side of Tennis]
坂東 海

Scene 15
[NO SECURITY]

23時15分にレッスンを終え、後片付けをして皆で「お疲れ」と別れる。
車に乗り込みイグニッションをまわし走り出す。

自衛隊基地、大きな公園の間の道を走り抜ける。
昼は緑が眩しい通りもこの時間じゃ鬱蒼としていてちょっと不気味だ。
今頃もう家族は寝てるかなあ、街は酔っぱらいだらけだろうなあ、そんな事を考
えていたら、いきなり目の前の横断歩道を数人の若い女の子が自転車で横切り、
公園の中へ消えて行った。
国道から住宅街への近道しているんだろうけど危ねえなあ…おまけにスカートは短いし…。
少し行くと携帯で楽しそうに話している女の子とすれ違う。
携帯で話そうがメールをしてようが、この暗闇の中で独りには変らないんだが…。

駅へと続く市道に入ると急にネオンが増える。
コンビニ、スタンド、レンタルビデオ…金を落としてくれと24時間輝いている。
すると塾帰りとおぼしき小学生が漫画を読みながら駅の方から歩いて来る。
全く何だかなあ…。
遅くまで仕事してるなんて感じてる自分を笑いたくなる。
そしてこの世の中を笑いたくなる。

自転車の女の子達、携帯の女の子、塾帰りの小学生。
お前等はどうやって自分を守るんだい?戦うんだい?
法律も今のお前等は守れない。
犯られたり、さらわれた後、オマワリが来て調べ上げ、誰かを捕まえ、罰するだろう。
でも、事実は消せないし、時間は戻らない。

ふと気付くと後でバイクが俺を煽ってる。
こんなファミリーカーだから仕方ないか、と頭では思いつつ、体は車を止めバイクの方に歩み寄っていた。
親のすねかじりのくせにゲットー気取った半端な野郎だったけど、面倒な事になっちゃったなあと思ってたら、急に奴は「すいません、悪気はなかったんです」と言い、走り去ってしまった。
拍子抜けしながらも安心して、又車を走らせ家についた。

2歳の長女がまだ寝付けずにいて「パパお帰り」と抱きついて来る。
さっきのバイク君と喧嘩になってたら…。
俺は独りじゃないんだ…。
家族の無邪気な愛情に俺は見合っているのか…。
全てを笑い飛ばせる、せめて家族だけは守れる強い奴になりたい…。

「願わくば 愚痴ることもなく 妬むこともなく 黙々と 願わくば ちゃかすこともなく 逃げることもなく 暮らしたい」強くなりてぇ/シオン

2004.6.2
Nerima
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SION | 投稿者 坂東海 00:01 | コメント(0)| トラックバック(0)

Scene 14 [小さな恋のメロディ]

[Another Side of Tennis]
坂東 海

Scene 14
[小さな恋のメロディ]

大学を出てすぐに高1から付き合っていた彼女と結婚した。
周りは「早すぎる」と言ったけど、その人達は以前「6年も付き合ってていつ結婚するんだ?」と言ってたし、そのうち「遅すぎる」と言い出しただろう。

中1からテニスを始めて、何とか関東学生に出れる位になっていた僕はもう少し選手生活を続けたくて、先輩がいるテニススクールでアルバイトコーチをしながらトーナメントを回っている。
ラケットやシューズはメーカーが提供してくれている。
「選手層が厚いアメリカじゃ本当のトップじゃないと用品提供なんかしてもらえない。日本のテニス選手は恵まれすぎてハングリー精神が足りない」なんて話も聞くが、その通りだとも思う。
「選手、コーチと言えばカッコイイが要するにプータローだ」と親は言う。
今26歳。
トップ選手にはなれないけどJOPの上位なら何とかなる年齢だ。

テニススクールでは皆に大事にされ必要とされているのを感じる。
負ければそこにいる理由がこれっぽっちもないトーナメント会場とは大違いだ。
大金を稼ぎたい訳じゃあないが、家族のことを考えるとつい(もう選手は諦めてコーチ一本に絞ろうかな…それとも堅気になろうかな…)と考えてしまう。
実際、生活の中心がレッスンになっている気もする。

彼女はずっと応援してくれている。
義父母達は「早く諦めさせなさい」と言っているんだろう。
いつも微笑んでくれている彼女には勿論感謝している。
ただ子供が産まれてから僕達は確実に不安を感じている。

この間、ダウンタウンが司会をしている歌番組を見ていたら赤いロングジャケッ
トを着た男がこんな歌詞を唄ってた。
“家族とか未来は重荷かい”Teenage Lust/Kai Band
子供の笑顔を見ると全てが報われた気がするけど、たまらない気持ちにもなる。

それでも、いつまでなんて考えたりはしない。
永遠にこの生活が続く訳じゃないのもわかっている。
でも期限付きの青春ごっこにはしない。

1996.10.12
Kudanshita
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KAI | 投稿者 坂東海 00:01 | コメント(0)| トラックバック(0)