2005年03月17日
Scene 55 [少々インチキでかまわないから]
[Another Side of Tennis]
坂東 海
Scene 55
[少々インチキでかまわないから]
公務員の彼女は、俺よりきっちり休める、帰れるで「一緒に遊べない」と文句を言う。
「仕方ないだろ、仕事なんだから。お前等と違って、年末年始だってろくに休めない会社も増えてるんだし…」俺がそう応えると電話は切れ、二度とつながる事はなかった。
“仕方ない”
世間と自分の中の気持ちの折り合いをつける為に、何度この言葉を受け入れて、何度この言葉で相手をやり過ごしたのだろう。
それで俺はどこに辿り着いたんだ?
女が出来たのをごまかしてるのならまだしも、会社じゃ偉そうにしてるだけでうだつの上がらない俺が、熱っぽく語る事もしないで、さも仕事してる様な顔で“仕方ない”って言っても彼女が納得するはずもない。
そんな年末年始からあっと言う間に3月。
1人で恵比寿の新しいLive Houseに行き、
“あわてんなよ 雨があがったからって いきなり晴れるわけもないさ 俺はまだ やっと今 始まったばかりだろ 早くはない 遅くはない 始めたら始まりさ 何度でも 何度目でも 始めたら始まりさ”(通報されるくらいに/SION)
と唄いながら目に涙をためるシオンを見た。
お嬢様のくせに俺の影響でシオンの歌が好きになり、一緒に行った野音で「シオン!」と声をあげていた彼女を思い出す。
お嬢様の彼女と俺の接点はテニス。
金持ち世界から見れば、どうしようもない世界の俺が試合で勝ち進んだ事で知り合って、今から9年位前の携帯もそう普及してなかった頃だから、家に電話すると彼女の親には苦虫をつぶした様な応対をされたもんだ。
“始めたら始まりさ”か…シオン良かったな。
社会人になってからの俺は、終る事ばかり考えて始める事は考えてなかったかもしれない。
明日は、カッコ悪い役回りは承知で仕事してみるか。
会社の帰りには一杯呑んで気をデカクして、彼女にも電話してみよう。
もともと気の利いたな事は話せないんだ。
“仕方ない”なんて言葉を吐く俺でなければいい。
照れて「少々インチキでかまわないから、あんた最後まで信じさせてよ」なんてシオンの真似でもしてくれりゃいいけど。
“ちょっと前ならひっくり返ったニュースも 今じゃ日替わりでそしてすぐに人ごとに 怪物は 街中に すぐ隣に そして俺の中にもいる 楽しい話まで触りすぎるから ほんとのことまで紙切れに見えて 嘘つきは 街中に すぐ隣に そして俺の中にもいる 少々インチキでかまわないから 誰か最後まで信じさせてくれ”(少々インチキでかまわないから/SION)
2005.3.11
Ebisu
坂東 海
Scene 55
[少々インチキでかまわないから]
公務員の彼女は、俺よりきっちり休める、帰れるで「一緒に遊べない」と文句を言う。
「仕方ないだろ、仕事なんだから。お前等と違って、年末年始だってろくに休めない会社も増えてるんだし…」俺がそう応えると電話は切れ、二度とつながる事はなかった。
“仕方ない”
世間と自分の中の気持ちの折り合いをつける為に、何度この言葉を受け入れて、何度この言葉で相手をやり過ごしたのだろう。
それで俺はどこに辿り着いたんだ?
女が出来たのをごまかしてるのならまだしも、会社じゃ偉そうにしてるだけでうだつの上がらない俺が、熱っぽく語る事もしないで、さも仕事してる様な顔で“仕方ない”って言っても彼女が納得するはずもない。
そんな年末年始からあっと言う間に3月。
1人で恵比寿の新しいLive Houseに行き、
“あわてんなよ 雨があがったからって いきなり晴れるわけもないさ 俺はまだ やっと今 始まったばかりだろ 早くはない 遅くはない 始めたら始まりさ 何度でも 何度目でも 始めたら始まりさ”(通報されるくらいに/SION)
と唄いながら目に涙をためるシオンを見た。
お嬢様のくせに俺の影響でシオンの歌が好きになり、一緒に行った野音で「シオン!」と声をあげていた彼女を思い出す。
お嬢様の彼女と俺の接点はテニス。
金持ち世界から見れば、どうしようもない世界の俺が試合で勝ち進んだ事で知り合って、今から9年位前の携帯もそう普及してなかった頃だから、家に電話すると彼女の親には苦虫をつぶした様な応対をされたもんだ。
“始めたら始まりさ”か…シオン良かったな。
社会人になってからの俺は、終る事ばかり考えて始める事は考えてなかったかもしれない。
明日は、カッコ悪い役回りは承知で仕事してみるか。
会社の帰りには一杯呑んで気をデカクして、彼女にも電話してみよう。
もともと気の利いたな事は話せないんだ。
“仕方ない”なんて言葉を吐く俺でなければいい。
照れて「少々インチキでかまわないから、あんた最後まで信じさせてよ」なんてシオンの真似でもしてくれりゃいいけど。
“ちょっと前ならひっくり返ったニュースも 今じゃ日替わりでそしてすぐに人ごとに 怪物は 街中に すぐ隣に そして俺の中にもいる 楽しい話まで触りすぎるから ほんとのことまで紙切れに見えて 嘘つきは 街中に すぐ隣に そして俺の中にもいる 少々インチキでかまわないから 誰か最後まで信じさせてくれ”(少々インチキでかまわないから/SION)
2005.3.11
Ebisu