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Scene 82 [ようよう]

[Another Side of Tennis]
坂東 海

Scene 82
[ようよう]

コートにブラシをかけてた。
「テニスやってたんですか?」
俺と年格好がそう変らない男が声をかけて来た。
若く見えるけど40位だろう。
「コートでブラシかけてるんだから当たり前だろう」
とは言わず、「ええ、ガキの頃にちょっと」と答える。

奴が「テニスやってたんですか?」と“過去形”で、しかもコートでブラシをかけてる最中の俺に聞いてきたのも当たり前だ。
俺はヘルメットにニッカボッカ。
ここには足場のバラしに来てる。
一つ能書き垂れておくとニッカボッカって呼び名は、ニッカーボッカーズって言うオランダの膝下で留める半ズボンから来てるらしい。

「若い人に“コートの中に入るんじゃねえ”って言って、ベースラインの後ろ通らしてるし、おまけに今のブラシのかけ方もただかけてるんじゃなくて、最初から最後迄止めないからすぐわかりましたよ。レッスンに気を使ってもらってありがたかったです」

親方から言われた現場はデカイ大手スーパー。
屋上の看板工事の足場のバラシ。
着いてみたら屋上にはテニススクール。
俺等がバラしてる真下でレッスンが始まる。
気にしてる暇はないが、ボールを打ってない時は皆がこっちを見てるのがわかる。
20前半だろうか、やたら一生懸命で活き活きとボールを追いかけて、デカイ声で客を励ましてるコーチがいる。

昼飯に行く前に一服してると、レッスンが終っても独りでサーブを打ってたさっきの元気のいい兄ちゃんがコートから出て来た。
「暑いっすね!いつ迄っすか?」
「今日バラしたのを明日あんたらの営業前にコートを横切って向こうに出して、クレーンで降ろして終りかな」
なんて会話をしてたら、思わず「1球打たせてくれない?」と口走っていた。

「いいっすよ」と兄ちゃんが貸してくれたラケットを持ったら軽い軽い。
“俺が試合出てた頃はみんなウッドでさあ、プリンスがデカラケを出したばかり…”なんて言いそうになったが、それは口にせずコートで兄ちゃんと向かい合う。
「行きますよ」と兄ちゃんがサーブを打って来る。
明らかに手を抜いてくれてるが、ちゃんと返せないって言うか飛ばない。
ラケットの性能も上がっているんだろうに。
ウチの若いのがニヤニヤこっちを見てる。
何回か打っても埒が明かないんでもう終りにしようと、「ねえっ、思いっ切り打って!」と言う。
「はい!」と打ち込んで来たサーブは速ええのなんの。
当たるどころか動けもしやしねえ。

そんな昨日があっての今朝。
資材を出すのに手間取って、レッスンの頭に食い込んじまった。
何とか球が飛び交う前に大まかには終ってホッとしてたら、残った資材を慌ててコートの中を横切って運んで行く若いのをテニス部の部長だった時みたいに怒っちゃって、俺等が通った辺りのコートの砂が気になってブラシをかけてた訳だ。

最後の確認を終えて出て行こうと何気なくコートを振り返ったら、俺と同じ位のコーチが黙礼をしてくれて、奥のコートで兄ちゃんが手を挙げてる。

何か気分いいじゃねえか。

2005.9.16
calcium
エッセイ | 投稿者 坂東海 00:01 | コメント(0)| トラックバック(0)
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