2005年06月16日
Scene 68 [虹]
[Another Side of Tennis]
坂東 海
Scene 68
[虹]
目の前の女の子が友人をトントンと叩いて左側の空を指差してる。
その指先を見て俺も隣にいる彼女をトントンと叩いて空を指差す。
それは瞬く間にさざ波の様に広がって行った。
ステージ上の“唄うたい”もそれに気付き、右側の空を見上げる。
“SORRY BABY 誰かさんみたいに 俺に明日見えないからSORRY BABY約束なんてできたもんじゃないんだ こんな俺をうらむかね”SORRY BABY/SION
2番のサビを唄い終わった彼は左手で空を指差して、会場の皆に“虹”が出ている事を知らせた。
梅雨空を心配して野音に集まって来ていた皆から、さっきまでの重たい天気とミスマッチの虹がオープニングの曲と同時に出た驚きと、それを皆で喜び合う一体感を表すどよめきがあがる。
そしてその曲が終ってのMC。
「いやーっ、これ(虹)を出すのに時間かかっちゃって」と開演が押した事をさり気なくフォロー。
洒落てるよな、SION。
(開演が押したのは翌日ダチから聞いたんだが、リハ後にギターアンプが爆発!? (真空管?)したらしい)
次の2曲目の途中で虹は消えて、明るい感じの曲が続いた後の11曲目。
へヴィーなギターが響く。
“ガード下では目の見えない男がハモニカ吹いてる 盲目の人生ですがなぜかまだ生きていたいと 書かれた段ボールの横で 電車と車と足音にけとばされて あんたに恵みはない だけどあんた吹くのを止めない まるで息をするためにそうしているかのように きれいなビルの建ち並ぶ足元で すえたゆばりと消毒液が煮立ってる”ガード下/SION
何度もLiveで聴いてた曲が物凄いデカイ塊になって向って来る。
彼女は「鳥肌が立った」と俺に呟く。
俺は缶ビールを片手にうなずきながら、親に手を引かれていた頃から酒を呑み出して街を徘徊し出した頃迄だろうか、新宿の東口から西口のガード下にいつもいた戦争で体の部分々々を失ってた元日本兵を思い出してた。
繰り返される事で上がって行くグルーヴ、それはバンドが遠くまで到達した証。
そのグルーヴに終りはなく、どこまでも登り詰めて行く。
約1週間前のナダルとプエルタのフレンチ決勝は、グラウンドストローカー達が新たなステージに上がった事を強烈に現していた。
ベースラインからの壮絶な打ち合いながら、殆どのボールがサイドラインを抜けて行くラリー。
偉大なグランドストローカー達が積み上げて来たレベルの更にその上で彼等はプレーしていた。
そう、決していきなり彼等がそういうプレーを始めたのではなく、“あいつに勝ちたい”とプレイヤーがスピード、スピン、フットワークとグレードアップして来た繰り返しの結果=伝承と新興って奴だ。
“やる”だけでなく”やり続ける”こと、”壊す”だけでなく“生み出す”こと。
それが大事なのは、何かにちょっと真面目に打ち込めば気付く事だ。
ナダルが見せた“シコリ”は19才の若者のGUTS、プエルタの激しいプレーと裏腹の諦観したかの様な表情は、ドーピングでの9ヶ月出場停止を乗り越えて来た26才のタフさを感じさせた。
やり遂げる為のエナジーが今必要だ。
今俺等は、“ガード下”で陽気に騒いでる。
来年の6月もかましてくれよ!SION!Nadal!
2005.6.11
Hibiya
坂東 海
Scene 68
[虹]
目の前の女の子が友人をトントンと叩いて左側の空を指差してる。
その指先を見て俺も隣にいる彼女をトントンと叩いて空を指差す。
それは瞬く間にさざ波の様に広がって行った。
ステージ上の“唄うたい”もそれに気付き、右側の空を見上げる。
“SORRY BABY 誰かさんみたいに 俺に明日見えないからSORRY BABY約束なんてできたもんじゃないんだ こんな俺をうらむかね”SORRY BABY/SION
2番のサビを唄い終わった彼は左手で空を指差して、会場の皆に“虹”が出ている事を知らせた。
梅雨空を心配して野音に集まって来ていた皆から、さっきまでの重たい天気とミスマッチの虹がオープニングの曲と同時に出た驚きと、それを皆で喜び合う一体感を表すどよめきがあがる。
そしてその曲が終ってのMC。
「いやーっ、これ(虹)を出すのに時間かかっちゃって」と開演が押した事をさり気なくフォロー。
洒落てるよな、SION。
(開演が押したのは翌日ダチから聞いたんだが、リハ後にギターアンプが爆発!? (真空管?)したらしい)
次の2曲目の途中で虹は消えて、明るい感じの曲が続いた後の11曲目。
へヴィーなギターが響く。
“ガード下では目の見えない男がハモニカ吹いてる 盲目の人生ですがなぜかまだ生きていたいと 書かれた段ボールの横で 電車と車と足音にけとばされて あんたに恵みはない だけどあんた吹くのを止めない まるで息をするためにそうしているかのように きれいなビルの建ち並ぶ足元で すえたゆばりと消毒液が煮立ってる”ガード下/SION
何度もLiveで聴いてた曲が物凄いデカイ塊になって向って来る。
彼女は「鳥肌が立った」と俺に呟く。
俺は缶ビールを片手にうなずきながら、親に手を引かれていた頃から酒を呑み出して街を徘徊し出した頃迄だろうか、新宿の東口から西口のガード下にいつもいた戦争で体の部分々々を失ってた元日本兵を思い出してた。
繰り返される事で上がって行くグルーヴ、それはバンドが遠くまで到達した証。
そのグルーヴに終りはなく、どこまでも登り詰めて行く。
約1週間前のナダルとプエルタのフレンチ決勝は、グラウンドストローカー達が新たなステージに上がった事を強烈に現していた。
ベースラインからの壮絶な打ち合いながら、殆どのボールがサイドラインを抜けて行くラリー。
偉大なグランドストローカー達が積み上げて来たレベルの更にその上で彼等はプレーしていた。
そう、決していきなり彼等がそういうプレーを始めたのではなく、“あいつに勝ちたい”とプレイヤーがスピード、スピン、フットワークとグレードアップして来た繰り返しの結果=伝承と新興って奴だ。
“やる”だけでなく”やり続ける”こと、”壊す”だけでなく“生み出す”こと。
それが大事なのは、何かにちょっと真面目に打ち込めば気付く事だ。
ナダルが見せた“シコリ”は19才の若者のGUTS、プエルタの激しいプレーと裏腹の諦観したかの様な表情は、ドーピングでの9ヶ月出場停止を乗り越えて来た26才のタフさを感じさせた。
やり遂げる為のエナジーが今必要だ。
今俺等は、“ガード下”で陽気に騒いでる。
来年の6月もかましてくれよ!SION!Nadal!
2005.6.11
Hibiya
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